(H25.9.26)

タミヤ 1/24 ロータス30  (tamiya 1/24 lotus 30)

昭和40年の初秋、モデルカーレーシングの爆発的な波が田舎の町にも押し寄せていた頃のお話です・・・少年雑誌では毎月の様に、レーシングカーキット、サーキットを紹介し、更には実車のF1・インディ・プロタイプの特集を組んでいました。

 

何たって、ロータスのジム・クラーク、ホンダのリッチー・ギンザー、フェラーリのジョン・サーティーズ、BRMのグラハム・ヒルが人気で、子供たちはレーサー・F1の思い入れを、モデルカーレーシングのキットに託したのでした。

 

当然、実車が活躍中のコグレのロータス・フォード(F1とインディは混同されていた)、コグレのフェラーリ158が一番人気であり、童友社のBRM(P271)、東京プラモのブラバム(ホンダ271)が次に続いていたのです。ニチモのフェラーリ156(シャークノーズ)は既に旧型でもあり、少年雑誌のF1特集でも見る事が無いため人気薄でした。

 

コグレ、ニチモ、童友社、東京プラモ、三共のキットが大多数を占め、タミヤは圏外にありました。おもちや屋の棚には「タミヤ 1/24 ジャガーDタイプ」のキットが何ヶ月も売れずに残っており、小学生の私でも「何で、あんな旧式のレーシングカーを販売しているのか!」全く理解出来ず「魚雷艇・戦車メーカーだから仕方ない」と思っていたのです。

しかし、そんな矢先、衝撃の出来事が起きました。

 

その頃、小学生ながら既に、レーシングカーは空気抵抗が少なく低車高、低重心の車が有利と感じていましたが、当時のレーシングカーキットでは、ボッテリとしたスタイルの車種が多かったのです。

 

しかし、昭和40年の暮れ、ついにタミヤから、衝撃のロータス30が発売されました。

そのボディは「流線型で地を這うほど低い車高!」、そのためタイヤを覆うフェンダーが大きく盛り上がり、タイヤがぎりぎりに収まる・・・・小学生から見ても理想の車でした!

そして「ドライバーはジム・クラーク!」。

とてもジャガーDタイプを売っていたタミヤと思えない、小・中学生の心をつかんだ180度方向転換の車だったのです。

 

私にとって、小学生の頃に憧れた「ジム・クラーク、ロータス30」は今でも同じです。それはロータス23でもなく、ロータス40でもなく、「ロータス30」そのものなのです。・・・・・タミヤのロータス30、クラークが乗ってます!。今にでもサーキットを全開で駆け巡りそうです。・・・そう、ジム・クラークとコーリン・チャップマンの魂が蘇ってきませんか!。

 

 

(H24.10.1)

三共 ネズミちゃんシリーズ ヴァンウォール  Vanwall'56

 スロットレーシングカーが流行る以前のお話です。

 昭和36~7年(1961年前後)の頃、当時小学校低学年の私は、以前より子供の間で、ある噂を聞きつけており、それがとても気になっていました。

 それは、町の薬局で「プラモデル」が販売され出し、毎日、小学中学生でびっしり賑わっているとの事でした。昨年、近所のお兄さんにゼロ戦のプラモデルを見せてもらって以来、プラモデルに興味津々となっていたのです。(ゼロ戦レッド・・かっこいい)。その頃は、おもちゃと言え殆どがセルロイドやブリキ製であり、大人向けに、僅か木製のソリッドモデルはある程度の時代。

 

 私は意を決して、そこに行く事にしました。恐る恐る薬局のドアを開けると、店内は薄暗く、電灯の下、中央の棚には薬品に混ざって、木製モデルとプラモデルがぎっしりと並べられているのでした。初めて見る光景・・すごい。既に中学生が数人いて、箱の中をあけて見ていました。(プラモデルは箱の中見ていいんだ・・)

 しかし、小学校低学年の身長では、棚の箱を手に取る事は出来ず、ただただ、後ろから箱絵を眺めているだけでした。

それに、小学生に買う事が出来る様な価格でもなく、全く遠い存在であったのです。

 そんな中、お祭りの出店で「30円のレースカーのプラモ」を買う事が出来ました。

※タミヤのベビーレーサーシリーズで車種はクーパーかフェラーリのF1だったと思います。実車とはかけ離れたスタイル、坂を転がして遊ぶだけのもの、しかし人形・クリヤパーツ付きの本格派、タイヤホイール一体のプラスチック、箱絵の雰囲気はとても良かったです。

 

 とにかく、初めて「プラモデルが買えて、作れて、遊べて」と言う3拍子が揃い有頂天!小学生のお祭りのお小遣い、30円で夢が実現出来、大興奮の私でした。

しかし、それは坂を転がして遊ぶだけのもの・・すぐにプラ製のシャフトが折れ走行不能に・・・・・・何かが足りませんでした。

 

 数週間後、それは突然、訪れました・・・・・・・例のプラモデルを売っている店の前で、平積みにした、小さな小さな「ジャガーXKEタイプ」を発見したのです!

※当時の少年雑誌で既にジャガーEタイプの事は知っており、人気の車種でした。

 

 黄色いボディに、クリアパーツと人形付き(必須のアイテム)、ゴムタイヤに金属

ホイールとシャフト、更に驚いたのは「ゴム動力で走行出来る!」と言う事でした。

興奮さめぬまま、母に30円をおねだりし(母の日に30円で買ったカーネーションを贈っていた事もあり)、ついに買う事が出来たのです・・・・・・・・・・・・。

 

 写真は同シリーズのF1「ヴァンウオール」。ラリーブブックと言う小冊子がついており、実車のラリーの解説、模型のレースの仕方が書いてある本格的なものです。

 

 シリーズ車種はアルファロメオ、タルボラーゴ、クーパー、BRMのF1の他、ジャガーE、トラ2、ヒーレー100、ベンツ300SL、MGAと本物志向、スケールは1/43程度、ボディのデティールも素晴らしい出来で、価格以上のものがありました(30~60円位で販売)。

 ただ、加工しないと人形がシートに収まらない、また、設計図に従い、ギア部にポマードを塗っても「ノロノロ」としか走らないものでしたが、クラウンギアと軸受けの間に、ハトメやゴム飛行機の金属部品等を挟むと「見違える様なスピードで走る」素晴らしい素質を持ったプラモデルでした。

 小学生の夢を叶えてくれた「三共のネズミちゃんシリーズ」。スロットカーへ繋がる子供たちの夢を育ててくれた「かけがえのないプラモデル」・・小さな箱の中に妥協なく「夢をぎっしりと詰めこんでくれた」「三共の心意気を感じる」素晴らしいシリーズでした。